プロジェクトは2年間でしたが、様々なことができました:1)森林モニタリングプロット調査(奄美大島・沖縄島・西表島)、2)植物種分布調査(屋久島・奄美大島・徳之島・沖縄島・西表島)、3)市町村レベルの植物種チェックリストを網羅的に収集( 植物誌の記載情報を全て電子化)、4)植物の標本情報を収集し分布情報を電子化。
さらに、これらのデータを解析し、以下の5つの課題に取り組みました:1)系統・機能的構造指標を用いた、森林伐採の影響評価、2)植物の系統構造指標を用いた、琉球諸島フロラの固有性評価、3)種分布モデリングを用いた、琉球諸島植物種多様性の地図化、4)システム化保全計画法に基づく、琉球諸島の保全政策の現状評価、5)システム化保全計画法に基づく、優先的保全地域の特定。これらの結果は、昨年末から投稿を開始したので、論文になり次第このブログでも紹介していきますが、プロジェクト全体で明らかになった点は、以下4つです。
・琉球諸島の現状の保護区は、面積的に十分でなく、進化生態学的に重要な地域をカバーしていない。
・例えば、維管束植物全種を保全ターゲットにした場合、琉球諸島の保護区は過少配置で、琉球諸島に重点的に保護区を配置すべきことが明らかとなった。
・優先保全地域分析から、琉球諸島の優先順位は極め高く、日本の生物多様性保全の実効性は、琉球諸島の保全策にかかっていることが、一連の分析から判明した。
・システム化保全計画法の枠組みで、社会経済的コストを考慮した“実行性”のある保全策、進化生態学的に“実効力”のある保全策を立案できる可能性を示した。
「奄美・琉球地域の世界自然遺産登録や国立公園指定」に関する議論が進んでいますが、このプロジェクトの成果は、琉球諸島の生物多様性保全の実務に直接的に貢献すると自負しています。