Aakala T., Shimatani K., Abe T., Kubota Y. & Kuuluvainen T. (2015) Crown asymmetry in high latitude forests: disentangling the directional effects of tree competition and solar radiation. Oikos DOI: 10.1111/oik.02858
この論文のアイデアは、海外科研でフィンランド北部のバリオフィールドステーションに滞在している時に、共同研究者と議論して思いついたものです。森林群集を構成する樹木は、光を受けて光合成をすることで成長して樹冠を拡大し、空間を占有していきます。したがって、樹木間で、光と空間を巡る競争が生じます。また、高緯度の北方林では、太陽光の入射角度が低いので、太陽光が差し込む方位がとても重要になります:光が入射する方位に、樹冠を広げて受光効率を上げて、空間を占有していきます。このような樹木の樹冠のダイナミクスは、太陽光が真上から入射する赤道直下の熱帯林では見られないことです。私たちは、北方林の樹冠のダイナミクスを、太陽光の入射角度に対する応答と、周辺樹木との空間を巡る競争、2つのプロセスで説明するモデルを構築して、これら2つのプロセスの相対的な重要性を明らかにしました。角度統計モデルを、生態学の現象に適用した研究例は、とても少ないので、査読には随分時間がかかりましたが、研究アプローチとして新規的な内容を含んでいると思います。
フィンランドの北の果てにあるバリオステーションは、車でのエントリーは禁止されており、駐車場から、徒歩数時間でアクセスします。小さな湖のほとりにあり、無線LAN・食事・サウナ付きで立派なステーションでした。