1つめの議題は、環境省推進費プロジェクト「生態学的ビッグデータを基盤とした生物多様性パターンの予測と自然公園の実効力評価」に関するもので、今回の出張のメインテーマでした。日本の優先的保全地域の特定に関するデータ解析は、ほぼ完了し、目的や論点、図表なども決定でき、あとは論文をまとめるだけになりました。今夏までに2編の論文投稿を目指します。また、それに関連した日本の脊椎動物多様性の生物地理論文もまとめる見通しです。環境省推進費プロジェクトは後2年あるのですが、当初計画の目的は十分達成できる見通しです。なお、このプロジェクトの概念的・方法論的基盤になっている「システム化保全計画法」については、教科書的な本の出版も検討してます。私達のプロジェクトの話しをする度に「システム化保全計画法について日本語で読める本はないですか?」といった質問を受けます。ですので、環境省推進費プロジェクトの社会還元の一つとして、図書の出版を目指すことにしました。
2つ目の議題は、フィンランドの森林総合研究所(METLA)のチームと、4年越しでジリジリと進めているものです。余談ですが、この間、METLAはリストラされて無くなり、LUKEという組織に改組されました。森林部門は大幅に縮小され、残った研究者も、ヘルシンキ大の森林科学科のワンフロアの一角に移動させれるそうで、私達の訪問中にリフォーム真っ最中でした。フィンランドでは、特に新政権になってからの科学政策の見直しが劇的で、研究者はとても大変なようです(大学の教員も容赦なく解雇されてます)。色々と状況は変化しましたが、今回の出張で何とか論文化への見通しが立ったので、早急に進めたいです。
3つめの議題は、現状の森林施業の影響を、生物多様性オフセットの観点からアセスメントするもので、かなり新規的なテーマです。しかし、全球スケールデータの性質上、データバイアスの問題やロジックの細部を詰める必要があり、もう少し時間がかかりそうです。
他にも、現在進めている論文執筆の進捗等を確認したり、色々なことを議論したりできて、大変有意義な出張でした。