Buntarou Kusumoto, Akihiro Baba, Shin-jiro Fujii, Hisakazu Fukasawa, Megumi Honda, Yuta Miyagi, Daisuke Nanki, Takeharu Osako, Hikaru Shinohara, Takayuki Shiono, Yasuhiro Kubota (2016) Dispersal process driving subtropical forest reassembly: evidence from functional and phylogenetic analysis. Ecological Research doi:10.1007/s11284-016-1373-8
琉球諸島の亜熱帯林の大部分は、皆伐後に再生した二次林です。私達の研究グループでは、林齢傾度で数多くの調査区(プロット)を設置して、様々な発達段階の森林の構造(種組成など)を調査してきました。伐採直後の若齢二次林のプロットから、老齢な二次林、原生的な極相林を時系列化することで、亜熱帯林の再生プロセスを理解しようとしています。
今回発表した論文では、プロットの種組成データに、種の機能特性と系統データを組み合わせて、群集の機能的構造や系統構造の林齢に伴う変異を検証しました。(教科書的には)林齢の進行、つまり、群集の遷移に伴って、種組成は決定論的に変化することが予想されます:例えば、パイオニア種から極相種へのシフト。この群集再生の過程には、環境変化(例えば光環境の変化)による環境フィルター効果が関与していると考えれます。分析の結果は。そのような予想に反してました。林齢に伴う決定論的な群集集合プロセス(フィルター効果による特定種のソーテイング)は有意には作用していませんでした。
私達は、この結果に基づいて確率的プロセス(分散集合)の重要性を示唆しました。群集集合プロセスにおける中立理論の重要性が指摘されて久しいですが、。一方、琉球諸島の亜熱帯林の再生過程でも、それを支持する結果になりました。私達は、局所群集の集合パターンには、様々な階層(時空間スケール)でのプロセスが作用していることを考えています。今後は、異なる時空間スケールで卓越するプロセスの相対的重要性を定量する方向で研究を発展させていくつもりです。
なお、本論文の著者は11人です。この論文のデータは、私が鹿児島大学教育学部に在籍していた時の卒論生、琉球大学に移籍してからの院生との野外調査が元になっています。いま振り返ると、「よくもこんなにプロットを張りまくって調査していたものだと」、「若いとはいえ、学生・院生の皆さん、沖縄の島にこもって、よくもこんなに樹木を測ったものだ」と思います。皆さん(ほとんどが、今では学校の先生になっていますが)、ご苦労様でした。
なお、これらのプロットの多くは、2年毎に再測定されているので、樹木の成長や枯死のデータも膨大な量(約20年分)があります。森林の動態については、今後さらにデータ解析をして論文にしなくてはいけません。。。