新年早々に、スペインマラガで開催された国際生物地理学会(IBS)に出席してきました。欧州に渡航するついでに、ヘルシンキに立ち寄って共同研究者と共著論文の打ち合わせをして、その後、スペインマラガに向かいました。 今回のIBSは参加者が多くて、(私が今まで出席した中では)規模が大きかった印象です。マラガは欧州でも有名な観光地のようで、日本の沖縄のような感じで、街中は観光客で賑わっていました。
大陸スケールのメタ群集レベルの種アバンダンス(SAD: specie abundance distribution)の統計分布に関する論文を、Global Ecology and Biogeography誌に発表しました。一昨年から沖縄を定期的に訪問してくれているトム・マシューさん(バーミンガム大学)との共同研究の成果です。 この論文では、北米森林モニタリングデータ(FIA:Forest Service's Forest Inventory and Analysis Program)の樹木種SADにgambinモデルを適用しました。そして、SADパターンがどのような環境要因で説明されるのかを回帰分析で明らかにしました。この論文の新規的な点は、メタ群集レベルのSADに注目していることです。従来のSAD研究は、局所群集の種の優占・希少性の分析に留まっていました。これは、大規模な空間スケールでは、種アバンダンスデータを収集するのが困難だったからです。しかし、最近では、広域的にサンプリングされた群集データが広く公開されて利用可能になっています。したがって、この論文のように、メタ群集レベル(44 km × 44 km グリッド)の種アバンダンスが分析できるようになりました。局所的な空間スケールでは、サンプリングバイアスや局所的要因に影響されるので、SADのマクロ的環境ドライバーを分析する試みは、なかなかうまくいきませんでした。今回発表した論文では、メタ群集レベルのSADが気温でとてもよく説明されることが示されました。広域的には種の優占性や希少性は気候要因で決定されるということでしょうか。 なお、広域的なSADパターンは、現在の気候要因だけでなく、メタ群集(種プール)における歴史的多様化プロセス(種分化などの進化プロセス)も反映しています。その分析については、別のプロジェクトでも進めていて、とても興味深い結果が得られています。メタ群集(種プール)レベルのSAD研究は、今までほとんど手をつけられなかった新規的な領域なので、今後の展開が楽しみです。
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Authorthink-nature.jp久保田康裕(Google Scholar) Archives
July 2023
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