Kubota Y., Kusumoto B., Shiono T., Ulrich W. & Jabot F. (2015) Non-neutrality in forest communities: evolutionary and ecological determinants of tree species abundance distributions. Oikos (doi: 10.1111/oik.02232)
この論文では、全球を網羅する森林群集の種個体数データを収集して、種個体数分布の中立性からの逸脱度を定量しました。そして、環境フィルター効果と密度依存的死亡(Janzen-Connell効果)の地理的パターンを明らかにしました。「熱帯・温帯・寒帯に至る森林バイオームの形成には、進化生態学的プロセスの環境勾配があるのではないか?」と予想していました。以下の地図は、中立パターンから有意な逸脱を示した森林群集を赤丸で示しています。
熱帯や島嶼など、特異な進化生態学プロセスが卓越していそうな地域では、群集形成が非中立であることが示唆されます。しかし、環境フィルターやJanzen-Connell効果の利き方には、単純な環境勾配はなく、群集形成のプロセスは、同じバイオームでも地域差が大きいようです。
生物群集の中立理論には、以前から興味があり、幾つか総説を発表していました。でも、なかなか論文が出せませんでした。今回、ようやく1編発表できました。生物群集の中立理論に興味のある方は、以下の総説も合わせて読んでもらえると、この論文の問題意識も理解して頂けるかと。。。
久保田康裕(2011)森林の種多様性. 森林生態学(共立出版): 206-223.
平尾聡秀・久保田康裕・村上正志(2012)生物多様性の維持機構の解明に中立理論が果たす役割. 生物科学 64: 242-249.