Kusumoto B., Shiono T., Miyoshi M., Maeshiro R., Fujii S., Kuuluvainen T. & Kubota Y. (2014) Functional response of plant communities to clearcutting: management impacts differ between forest vegetation zones. Journal of Applied Ecology.
この研究は、研究室のビッグ?プロジェクトとして行ったものです。何がすごいかというと、日本に分布する植物種の機能特性を網羅的に全て定量した点です。特に、樹木種については、日本中で野外採集をして、様々な機能特性を測定しました。実に日本に分布する樹木種の9割を採集・測定しました。卒論学生、修士院生、博士院生、博士研究員が一丸となって取り組んだ成果です。北は北海道から、南は沖縄の与那国島まで、遠大なる採集旅行をしました。また、多くの方に採集場所の情報を提供して頂き、また、実際の採集にも協力して頂きました。この場を借りて、感謝を申し上げます。
この研究には、楽しい裏話がたくさんあるのですが、以下幾つか紹介します。日本中調査して実感したことです。
・日本の交通網の凄さ:
この研究の採集は、ほぼ1年(4月〜11月くらいまで)で完了しました。恐るべきスピードで採集したのですが、日本の精緻な交通網があったればこそです。特に高速道路の密度って凄いんですね。おかげで、全国の採集ポイントを再節約・最短ルートで巡ることができました。あるポイントで採集したら、次のポイントをカーナビに入力して、ナビの指示するままに高速道路で速やかなる移動、といった感じでした。今まで私は、「無駄な高速道路は無くてもいい」と考えていましたが、今回は、日本の高道路の密度の高さに大変お世話になりました(笑)。
・宅急便のシステムの凄さ:
採集した植物は、化学特性なども分析するので、「生」(冷温状態)で研究室に送る必要がありました。これが大変で、クール宅急便は不可欠でした。あるポイントで採集したら、これまたカーナビで検索して、最寄りの宅急便集荷場へ直行! 利用した宅急便集荷場のポイントは、そのまま日本地図になりそうな数でした。また、当然なんでしょうが、全国どこからでも時間通りに宅配されるんですね(笑)。
・台風と停電:
この研究を行っている時、最も悩まされたのは台風でした。運悪く台風に憑かれてしまったのです。沖縄で台風は珍しくないですが、採集で行く先々で、台風に見舞われました(北海道でも、関東でも、中部でも、九州でも・・・)。また台風が襲来するたびに研究室が停電するので、台風に備えてドライアイスをフリーザーの投入する作業などは、ストレスそのものでした(苦笑)。
以上、どうでもいいことを書いてしまいました。
この論文の新規性は、群集の機能的多様性指標を用いれば、森林伐採が群集に与える影響をプロセスベースで、(群集集合のメカニズムを通して)評価できる、といった点です。従来の森林管理の研究では、分類学的指標(種多様性)で人為インパクトを評価していました:例えば、伐採したら種数が増減するとか、現象論的でした。「機能的多様性は、定量的でヒューリステイックなアプローチを可能にする」ことが、今回の私達の論文のメッセージです。この論文は日本全国のマクロスケール研究ですが、以下は、同様の視点で地域スケールで行った研究です。興味ある方は、併せて読んでください。
Maeshiro R., Kusumoto B., Fujii S., Shiono T. & Kubota Y. (2013) Using tree functional diversity to evaluate management impacts in a subtropical forest. Ecosphere 4: art70.