共同研究者の方々、学生・院生の方達と今まで行ってきた研究プロジェクト
天然林施業の実行可能性を考える
日本の現林政では、自然林では公益的機能の保全を重視し、木材生産からは撤退するような状況になっています。現在問題となっている北海 道などの国有林の天然林伐採問題は、その残滓とも言えるでしょう。しかし、単に森林伐採を中止させて林業から撤退することでいいのでしょうか。自然林での 持続的な林業が困難になった理由を科学的に評価する必要があると思います。さらに、国際的な森林資源の流通動態を考えると、安い海外資源に未来永劫頼って いられるとは、とても考えられません。木材資源も戦略的生物資源になり、木材価格も大きく変動するかもしれません。したがって、過去の天然林施業の経緯を 分析し、自国の天然林を持続的に利用するための管理策を構築することは、超長期的な視点からも極めて重要です。このプロジェクトでは各地の森林施業研究者との共同研究を通して、生態林学(Ecological Forestry)を提唱していきます。
北方林の動態と生態学的森林管理に関する研究
北方林の更新動態を長期モニタリングによって明らかにしようとしています。生態学的知見に基づいて、持続的森林施業のあり方について具体的な提言をすることを目的にしています(詳細は森林資源管理と天然林施業―エゾマツ林を例に―、及針葉樹林の施業モデルと生態学的管理 を参照)。また、大雪山国立公園に隣接した十勝川源流部原生自然環境保全地域では、北方林の潜在的な維持機構を明らかにしようとしています。
亜熱帯島嶼の生物多様性損失及び生態系機能劣化の評価モデルに関する研究
このプロジェクトでは、亜熱帯島嶼陸域における景観レベルでの森林群集の空間分布、物質(雨水・土壌)移動、生物多様性分布を記述する ランドスケープモデルを構築し、人為インパクトが生態系機能・生物多様性に及ぼす損失効果を定量的に評価しようとしています。亜熱帯の生態系が人為インパ クトを受けた場合に、不可逆的に崩壊してしまう“人為インパクトの臨界点(threshold)”を定量化することが、最終的な目的です。木材生産と生物多様性保全のトレードオフ関係を分析した施業シナリオ研究、下層除伐が木材生産性と樹木種多様性に及ぼす影響について検証しています。
森林モニタリングデータのメタ解析に関する研究
地球温暖化などグローバルスケールでの環境問題が顕在化し、大きな地理的スケールでの生態現象の解明が急務の課題となっています。しか し、そうした課題に個々の研究者が独力で取り組むには労力的に限界があるため、個々の研究者が得たプロットのデータを集約し、データベースに登録された多 点のデータを解析する試みが盛んに行われるようになってきてます。このプロジェクトでは、森林群集研究者間のネットワークを構築しデータベースを構築して います。地理的に異なる地域に分散しているプロットを包括的に解析し、気象データなどの環境条件と生態系パラメータの機能的な関連 性を定量化しています。
北米大陸の北方林における撹乱体制変化が生態系機能に及ぼす影響評価に関する研究
北方林の生産量が時系列上で減衰することが一部の研究者の間で注目され始めています。北方林は重要な森林資源であり、陸上生態系におけ る主要なCO2シンクです。したがって、北方林の生産量が減衰するメカニズムの解明は資源管理や環境問題の観点から緊急の課題です。どのような生態学的プ ロセスが、時間軸上の生産量変動を引き起こしているのでしょうか?このプロジェクトでは以下のような作業仮説を設定し、それをカナダ・ニューファンドラン ドで検証しています。「北方林では、近年の環境変動に対応した撹乱体制(強度・頻度)の変化が、森林の更新や土壌の遷移過程に影響し、従来の潜在的極相林 とは異なる代替的定常状態を創出し、森林の生産量衰退を引き起こす」。この作業仮説によると、代替的定常状態は、環境変動や森林管理等の人為影響によって 今後加速度的に形成され、北方林の森林資源や生態系機能を長期的に衰退させる可能性があります。本研究では、北方林の撹乱と林木種組成の傾度を設け、種間 相互作用や土壌化学特性に基づいて生産量衰退のメカニズムを明らかにしたいです。
知床国立公園の針広混交林の種多様性維持機構に関する研究
針広混交林は、生活型の異なる常緑針葉樹と落葉広葉樹の共存によって成立しています。針広混交林の維持機構を、各種個体群の空間構造動態のモデリングに基づいて解明しています。また、エゾシカが森林の更新動態に及ぼす効果も併せて検証しています。
九州山地の南限ブナ林の更新動態に関する研究
日本列島の冷温帯林を特徴付ける森林はブナ林です。本研究では、今まであまり注目されてこなかった、南限のブナ林の生態学的特徴を記載し、ブナ林の分布に関する研究に貢献しようと考えています。シカの食害が更新動態に及ぼす影響もデータを収集しています。
霧島の暖温帯針広混交林の構造と動態に関する研究
暖温帯針広混交林は、夏の多雨と冬季の低温・積雪で特徴づけられ、移行帯的な植生といえます。本研究では、構成樹種の機能型の多様性が、林分レベルの生産量に及ぼす効果を解析しています。シカの食害が更新動態に及ぼす影響もデータを収集しています。
琉球列島における植物種多様性維持機構に関する研究
森林性植物種の空間構造は、ハビタット内の多様な資源勾配と種固有の生理的適応幅の組み合わせに応じて非ランダム分布になり、同じ地域内でも種多様性は大 きく変動します。したがって、空間スケールに応じた植物種多様性の変異と、それを引き起こす種の交代メカニズムの解明(いわゆるβ多様性の問題)は群集生 態学の大きなテーマです。このような種多様性の空間的変異に影響力をもつ種群の空間構造動態の解明は、「地域内の植物種をどのような空間スケールで保護す るか?」といった保全生態学の問題に対しても重要な糸口を与えるでしょう。本研究では、亜熱帯林の空間的異質性を、環境傾度と撹乱後の群落再生過程に基づ き評価し、植物種のβ多様性創出機構を統計モデルで解析しています。
西表島の土地利用履歴が森林構造と生物多様性に及ぼす影響評価
西表島には、スダジイ・オキナワウラジロガシなどが優占する原生的な亜熱帯林が分布している。この研究では、地形傾度に伴う土壌水分環境が、森林の生産性と樹木群集動態に及ぼす影響を検証しています。
生態系ネットワークとエネルギー補償に基づく生物多様性維持機構の解明
西表島には、原生的常緑照葉樹林、伐採跡地二次林、リュウキュウマツ植林地、河畔・沿岸部のマングローブ林が分布しています。これらの森林はイリオモテヤ マネコのような希少な野生生物をはじめ、多様な動物相のハビタットとして機能しています。異なる森林タイプの生態系ネットワーク、それがもたらすエネル ギー補償効果、これらを定量的に評価することで、西表島の生物多様性の維持機構を解明しようとしています。
亜熱帯林の森林構造パラメータに基づくアカヒゲの生息環境評価
アカヒゲの分布密度や繁殖特性を、原生的な森林と人為インパクトの加わった二次林や人工林で比較調査し、アカヒゲの生息適地を定量しようとしています。
亜熱帯林の枯死木動態に基づくノグチゲラの生息適地評価
森林の立枯木・倒木などのCWD量とノグチゲラの空間分布の対応関係をモデリングしようとしています。
沖縄島北部のマングース個体群の空間分布動態の研究
環境省と沖縄県で行われているマングース駆除事業のデータに基づき、マングース個体群の動態を状態空間モデルで分析しようとしています。
森林性動物種の分布と種多様性パターンに関する研究
森林構造・人為インパクト傾度を説明変数として、動物種の空間分布を推定しようとしています。
着生シダ植物Aspleniumの生育環境と葉群動態に関する研究
琉球列島に分布する着生シダ植物Asplenium属(オオタニワタリ・ミナミタニワタリ等)は原生的な森林に多く出現するため、その 分布密度は亜熱帯林の自然度の指標になることが、私達の研究から示された。しかし、Asplenium属の生態に関しては、ほとんど何もわかっていない。 本研究の目的は、Aspleniumの生育環境と成長動態の特徴を明らかにし、個体群保全のための基礎データを収集することである。さらに、Aspleniumの懸垂土壌に分布する動物相を明らかにし、Aspleniumが亜熱帯林の生物多様性維持に果たす役割も評価しています。
着生ラン科植物の個体群動態に関する研究
ラン科着生植物(ナゴラン、オキナワセッコク、チケイラン、シコウラン、カシノキラン、クモラン、ヨウラクラン、マメズタラン等)の多くは絶滅危惧種にも 指定されています。これらのラン科着生植物の個体群動態はホストとなる林木の空間構造動態に規定されており、撹乱による森林構造の変化に応じて個体群の空 間分布が大きく変化します。よって、これら着生ラン科植物個体群の絶滅リスクは、森林伐採による大径木の消失と直結していることが予想されます。本研究で は、種個体群の動態を調査し、撹乱による林木種組成の遷移や樹木の小サイズ化、地形に応じた環境傾度等が、着生植物種の分布に及ぼす影響を明らかにしよう としています。
生物群集の中立理論に関する研究
生物多様性のパターン形成を分析する群集集合の研究は、生態学で最も関心を引くテーマの一つです。私達の研究グループでは、中立理論を階層的に拡張し、ニッチ理論を取込んだ統合理論を構築することを目標にしています。
島の生物地理学に関する研究
日本列島や琉球諸島に分布する様々な分類群の生物群集について、種多様性のパターン形成のメカニズムを解明しようとしています。
琉球諸島の蝶類の分布と群集集合パターン
琉球諸島では300種を超える蝶種が確認されています。島間の種組成変異は、島の地理的な配置様式、島の環境、食草(ニッチ)の分布によって生じているこ とが予想されます。このプロジェクトでは、琉球諸島をモデルシステムとして、蝶の群集集合パターンと移入・定着・絶滅プロセスを明らかにしようとしていま す。
マングローブとウミクサの多様性の地理分布パターン
マングローブとウミクサは、海と陸のはざまに分布する植物で、海流散布で分散することが知られています。この研究では、マングローブとウミクサの種多様性 と系統的多様性のパターンを全球スケールで分析し、多様性の地理分布の規定要因と進化的ホットスポットを明らかにしようとしています。
天然林施業の実行可能性を考える
日本の現林政では、自然林では公益的機能の保全を重視し、木材生産からは撤退するような状況になっています。現在問題となっている北海 道などの国有林の天然林伐採問題は、その残滓とも言えるでしょう。しかし、単に森林伐採を中止させて林業から撤退することでいいのでしょうか。自然林での 持続的な林業が困難になった理由を科学的に評価する必要があると思います。さらに、国際的な森林資源の流通動態を考えると、安い海外資源に未来永劫頼って いられるとは、とても考えられません。木材資源も戦略的生物資源になり、木材価格も大きく変動するかもしれません。したがって、過去の天然林施業の経緯を 分析し、自国の天然林を持続的に利用するための管理策を構築することは、超長期的な視点からも極めて重要です。このプロジェクトでは各地の森林施業研究者との共同研究を通して、生態林学(Ecological Forestry)を提唱していきます。
北方林の動態と生態学的森林管理に関する研究
北方林の更新動態を長期モニタリングによって明らかにしようとしています。生態学的知見に基づいて、持続的森林施業のあり方について具体的な提言をすることを目的にしています(詳細は森林資源管理と天然林施業―エゾマツ林を例に―、及針葉樹林の施業モデルと生態学的管理 を参照)。また、大雪山国立公園に隣接した十勝川源流部原生自然環境保全地域では、北方林の潜在的な維持機構を明らかにしようとしています。
亜熱帯島嶼の生物多様性損失及び生態系機能劣化の評価モデルに関する研究
このプロジェクトでは、亜熱帯島嶼陸域における景観レベルでの森林群集の空間分布、物質(雨水・土壌)移動、生物多様性分布を記述する ランドスケープモデルを構築し、人為インパクトが生態系機能・生物多様性に及ぼす損失効果を定量的に評価しようとしています。亜熱帯の生態系が人為インパ クトを受けた場合に、不可逆的に崩壊してしまう“人為インパクトの臨界点(threshold)”を定量化することが、最終的な目的です。木材生産と生物多様性保全のトレードオフ関係を分析した施業シナリオ研究、下層除伐が木材生産性と樹木種多様性に及ぼす影響について検証しています。
森林モニタリングデータのメタ解析に関する研究
地球温暖化などグローバルスケールでの環境問題が顕在化し、大きな地理的スケールでの生態現象の解明が急務の課題となっています。しか し、そうした課題に個々の研究者が独力で取り組むには労力的に限界があるため、個々の研究者が得たプロットのデータを集約し、データベースに登録された多 点のデータを解析する試みが盛んに行われるようになってきてます。このプロジェクトでは、森林群集研究者間のネットワークを構築しデータベースを構築して います。地理的に異なる地域に分散しているプロットを包括的に解析し、気象データなどの環境条件と生態系パラメータの機能的な関連 性を定量化しています。
北米大陸の北方林における撹乱体制変化が生態系機能に及ぼす影響評価に関する研究
北方林の生産量が時系列上で減衰することが一部の研究者の間で注目され始めています。北方林は重要な森林資源であり、陸上生態系におけ る主要なCO2シンクです。したがって、北方林の生産量が減衰するメカニズムの解明は資源管理や環境問題の観点から緊急の課題です。どのような生態学的プ ロセスが、時間軸上の生産量変動を引き起こしているのでしょうか?このプロジェクトでは以下のような作業仮説を設定し、それをカナダ・ニューファンドラン ドで検証しています。「北方林では、近年の環境変動に対応した撹乱体制(強度・頻度)の変化が、森林の更新や土壌の遷移過程に影響し、従来の潜在的極相林 とは異なる代替的定常状態を創出し、森林の生産量衰退を引き起こす」。この作業仮説によると、代替的定常状態は、環境変動や森林管理等の人為影響によって 今後加速度的に形成され、北方林の森林資源や生態系機能を長期的に衰退させる可能性があります。本研究では、北方林の撹乱と林木種組成の傾度を設け、種間 相互作用や土壌化学特性に基づいて生産量衰退のメカニズムを明らかにしたいです。
知床国立公園の針広混交林の種多様性維持機構に関する研究
針広混交林は、生活型の異なる常緑針葉樹と落葉広葉樹の共存によって成立しています。針広混交林の維持機構を、各種個体群の空間構造動態のモデリングに基づいて解明しています。また、エゾシカが森林の更新動態に及ぼす効果も併せて検証しています。
九州山地の南限ブナ林の更新動態に関する研究
日本列島の冷温帯林を特徴付ける森林はブナ林です。本研究では、今まであまり注目されてこなかった、南限のブナ林の生態学的特徴を記載し、ブナ林の分布に関する研究に貢献しようと考えています。シカの食害が更新動態に及ぼす影響もデータを収集しています。
霧島の暖温帯針広混交林の構造と動態に関する研究
暖温帯針広混交林は、夏の多雨と冬季の低温・積雪で特徴づけられ、移行帯的な植生といえます。本研究では、構成樹種の機能型の多様性が、林分レベルの生産量に及ぼす効果を解析しています。シカの食害が更新動態に及ぼす影響もデータを収集しています。
琉球列島における植物種多様性維持機構に関する研究
森林性植物種の空間構造は、ハビタット内の多様な資源勾配と種固有の生理的適応幅の組み合わせに応じて非ランダム分布になり、同じ地域内でも種多様性は大 きく変動します。したがって、空間スケールに応じた植物種多様性の変異と、それを引き起こす種の交代メカニズムの解明(いわゆるβ多様性の問題)は群集生 態学の大きなテーマです。このような種多様性の空間的変異に影響力をもつ種群の空間構造動態の解明は、「地域内の植物種をどのような空間スケールで保護す るか?」といった保全生態学の問題に対しても重要な糸口を与えるでしょう。本研究では、亜熱帯林の空間的異質性を、環境傾度と撹乱後の群落再生過程に基づ き評価し、植物種のβ多様性創出機構を統計モデルで解析しています。
西表島の土地利用履歴が森林構造と生物多様性に及ぼす影響評価
西表島には、スダジイ・オキナワウラジロガシなどが優占する原生的な亜熱帯林が分布している。この研究では、地形傾度に伴う土壌水分環境が、森林の生産性と樹木群集動態に及ぼす影響を検証しています。
生態系ネットワークとエネルギー補償に基づく生物多様性維持機構の解明
西表島には、原生的常緑照葉樹林、伐採跡地二次林、リュウキュウマツ植林地、河畔・沿岸部のマングローブ林が分布しています。これらの森林はイリオモテヤ マネコのような希少な野生生物をはじめ、多様な動物相のハビタットとして機能しています。異なる森林タイプの生態系ネットワーク、それがもたらすエネル ギー補償効果、これらを定量的に評価することで、西表島の生物多様性の維持機構を解明しようとしています。
亜熱帯林の森林構造パラメータに基づくアカヒゲの生息環境評価
アカヒゲの分布密度や繁殖特性を、原生的な森林と人為インパクトの加わった二次林や人工林で比較調査し、アカヒゲの生息適地を定量しようとしています。
亜熱帯林の枯死木動態に基づくノグチゲラの生息適地評価
森林の立枯木・倒木などのCWD量とノグチゲラの空間分布の対応関係をモデリングしようとしています。
沖縄島北部のマングース個体群の空間分布動態の研究
環境省と沖縄県で行われているマングース駆除事業のデータに基づき、マングース個体群の動態を状態空間モデルで分析しようとしています。
森林性動物種の分布と種多様性パターンに関する研究
森林構造・人為インパクト傾度を説明変数として、動物種の空間分布を推定しようとしています。
着生シダ植物Aspleniumの生育環境と葉群動態に関する研究
琉球列島に分布する着生シダ植物Asplenium属(オオタニワタリ・ミナミタニワタリ等)は原生的な森林に多く出現するため、その 分布密度は亜熱帯林の自然度の指標になることが、私達の研究から示された。しかし、Asplenium属の生態に関しては、ほとんど何もわかっていない。 本研究の目的は、Aspleniumの生育環境と成長動態の特徴を明らかにし、個体群保全のための基礎データを収集することである。さらに、Aspleniumの懸垂土壌に分布する動物相を明らかにし、Aspleniumが亜熱帯林の生物多様性維持に果たす役割も評価しています。
着生ラン科植物の個体群動態に関する研究
ラン科着生植物(ナゴラン、オキナワセッコク、チケイラン、シコウラン、カシノキラン、クモラン、ヨウラクラン、マメズタラン等)の多くは絶滅危惧種にも 指定されています。これらのラン科着生植物の個体群動態はホストとなる林木の空間構造動態に規定されており、撹乱による森林構造の変化に応じて個体群の空 間分布が大きく変化します。よって、これら着生ラン科植物個体群の絶滅リスクは、森林伐採による大径木の消失と直結していることが予想されます。本研究で は、種個体群の動態を調査し、撹乱による林木種組成の遷移や樹木の小サイズ化、地形に応じた環境傾度等が、着生植物種の分布に及ぼす影響を明らかにしよう としています。
生物群集の中立理論に関する研究
生物多様性のパターン形成を分析する群集集合の研究は、生態学で最も関心を引くテーマの一つです。私達の研究グループでは、中立理論を階層的に拡張し、ニッチ理論を取込んだ統合理論を構築することを目標にしています。
島の生物地理学に関する研究
日本列島や琉球諸島に分布する様々な分類群の生物群集について、種多様性のパターン形成のメカニズムを解明しようとしています。
琉球諸島の蝶類の分布と群集集合パターン
琉球諸島では300種を超える蝶種が確認されています。島間の種組成変異は、島の地理的な配置様式、島の環境、食草(ニッチ)の分布によって生じているこ とが予想されます。このプロジェクトでは、琉球諸島をモデルシステムとして、蝶の群集集合パターンと移入・定着・絶滅プロセスを明らかにしようとしていま す。
マングローブとウミクサの多様性の地理分布パターン
マングローブとウミクサは、海と陸のはざまに分布する植物で、海流散布で分散することが知られています。この研究では、マングローブとウミクサの種多様性 と系統的多様性のパターンを全球スケールで分析し、多様性の地理分布の規定要因と進化的ホットスポットを明らかにしようとしています。