現在、東南アジア地域のハーバリウムを網羅的に訪問して、標本情報の電子化の状況やデータ共有に関する考え方をインタビューしながら、共同研究ネットワークを構築しようとしています。ポイントは、研究推進のための予算と研究インフラから得られる研究上の利益の共有や配分のスキームです。
今までは、地域のハーバリウムの活動と、個々の研究者(研究グループ)のプロジェクトは、それぞれ別のコミュニティーで行われてきました。一方で、地域ハーバリウム活動の成果物(標本情報のような研究インフラ)は、広く個々の研究者のプロジェクトに、一方向的に利用されています。つまり、データプロバイダとデータユーザーに、コミュニテイーが分断されています。さらに問題なのは、地域ハーバリウムの地道な活動は、個々の研究プロジェクトの成果ほどには(必ずしも)評価されず、地道な活動を推進するリソースも不足気味なことです。実際、このような現状にフラストレーションを感じている研究者も少なくないです(実際、ワークショップ参加者からも、そのような意見がありました)。
今回のワークショップでは、データプロバイダとデータユーザーに分断されたコミュニティーを共同研究の枠組みで連結する試みを提案しました。私たちが現在進めている全球規模の植物多様性推定では、植物標本などの膨大な情報から種の分布データを編集していますが、このプロセス(データのフィルタリング、クリーニング、ジオリファレンスなど)はパイプライン化できます。このような関連ノウハウを、地域ハーバリウムの標本整備プロセスに提供することは十分に可能で、そうすれば、研究プロジェクトの予算をシェアしてお互いの活動を推進できるのではないか(win-win relationship strategies between research projects and local herbaria)という提案です。