Kubota Y., Kusumoto B., Shiono T. & Tanaka T. Phylogenetic properties of Tertiary relict flora in the East Asian continental islands: imprint of climatic niche conservatism and in situ diversification. Ecography DOI: 10.1111/ecog.02033
運良く、ほぼ一発アクセプトでした。この論文は、Kubota et al. (2015)の続編です。前論文では、種数・固有種数(分類学的指標)を生物多様性サロゲートにして、ホットスポット形成プロセスを「推論」しました。今回発表した論文は、種の分布情報と系統情報を統合し、群集系統構造(community phylogenetics)の地理的パターンから、その形成プロセスを「検証」したものです。これら一連の論文で、日本の植物種多様性の成り立ちを理解する上での、歴史生物地理的なプロセスが「解明」された、と言っていいでしょう。
また、この論文の発表で、今まで「戦略的に進めて来た研究プロジェクト」の基盤が、固まってきました。進化生態学分野の生物多様性研究では、1)生物の空間分布(地理分布)、2)機能特性、3)系統情報、4)古生物(化石情報)の4つが必須です。これらのデータを組み合わせれば、様々な切り口で研究プロジェクトを展開できます。今回発表した論文は、3番目のピースでした。これら4つの情報多角形の中点には、応用学的課題(保全研究)が位置づけられます。私は、このメタデータ構造を生物多様性研究の「エコシステム」(新規的な論文を生み出すためのメカニズム)と考えています。